
今日は、皆さん大好きな炭水化物と甘いものが、不眠症のリスクであるとする旨の研究をご紹介しましょう。







どうも患者の気持ちをおわかりでないというか、わかりにくいというか。


しかし、こうして患者さんを代弁して疑義を呈することはできる、と思いましてね。


それで、何ですか?その研究とやらは。

この研究は、食後の血糖上昇の速さの指標であるグリセミックインデックス(GI)と、
糖質の総量であるグリセミックロード(GL)が高いほど、不眠症の発症率が・・・

その横文字は何ですか、GIだの、GLだの・・・

そういうのよく食べると、不眠になりやすいって話なんです。



はたまたコーヒーに大量の砂糖を投入することに微塵の躊躇もございません。
そのほか、私にとっては、ラーメンにご飯を合わせるのは正義といっても過言ではないでしょう。

しかし、それが不眠の原因になるとしたら、ちょっと考え直すでしょう?



米コロンビア大学のJames Gangwisch氏らは、高GIないし高GL食品、果物や野菜などの食事摂取量と、不眠症の有病率/発症率との関連を調べた。
対象は、閉経後女性の健康調査「女性の健康イニシアチブ(WHI)」研究の参加者とした。対象者数は3年間の観察期間で53069人となった。
対象者の食事のGI値を5等分し、低GI値から高GI値それぞれの群に振り分けた後、不眠症との関連を調べた。その結果、GI値が高い食事をしている群ほど不眠症の有病率が統計的に有意に高かった。
具体的には、GI値が最も高い群(5等分したGI値のうち、最も高値)では、GI値が最も低い群(5等分したGI値のうち、最も低い群)より、1.11倍不眠症患者が多かった。
また、不眠症の発症率とも有意な関連が見られ、最もGI値が高い群は最も低い群と比較して1.16倍だった。
その一方で、ジュースではない果物や野菜、食物繊維、全粒穀物の摂取量が高い群では不眠症のリスクが低く、少なくともそれらの栄養素は閉経後女性の不眠症に関連する因子らしい事がわかった。
何故こうした結果となったかについてGangwisch氏は、「血糖値が急速に上昇するとインスリンが放出され血糖値は下がる。しかし、覚醒物質であるアドレナリンやコルチゾールも放出されてしまい、睡眠が妨げられるのでは」と述べている。
また、糖質が多い果物が不眠症のリスクでは無いことについて、「果物には糖の吸収をマイルドにする、繊維質も多いから」と説明し、「自然食には含まれない、精製された糖が女性の不眠の犯人になり得るが、恐らく男性もそうなのではないか」と述べている。

文句をぶつけたくなることマシンガンの如し、とでも言いましょうか。


これらの数字の意味は、どうとらえればよいのでしょうかね。

11-16%程度不眠症の発症率が高いと考えていただいて差し支えないかと。

この統計って、GI値以外の影響が取り除かれてるわけではないように思いますが・・・。

さすが、治療がうまくいかなかっただけあって、ネガティブな事によく気がつきますね?
おっしゃるとおり・・・これはコホート研究というもので、ランダム化試験と異なり、
それほど厳密に行動に統制をかけていない場合が多いのです。
食事はある程度統制されているかもしれませんが、その人のライフスタイルまで統制できませんから。
ある人は、睡眠によい緑茶を飲む習慣があるかもしれないし、
朝光をよく浴びている人かもしれない。これらの統制は、おそらくそれほど厳密にできていないでしょう。

では、仮に低GI生活が不眠症のリスクを抑制するとして、
逆に高GIによってもたらされれるメリットなどもあるのではないですか?
例えば、甘いものを摂取することでリラックス効果や集中力の向上が得られるとか。

甘い飲料や添加糖類は、抑うつ症状のリスクを上昇させる、とする報告もあります。

ラーメンライスとアイスクリームを諦めさせるに足る研究結果とは、
到底思いがたいでしょうなあ。

ラーメンライスもアイスクリームも、完全に諦めろとは言わないですよ。
私が言いたいのは、何事も、程々に・・・ということです。
特に夜間は、あまり過剰な糖質の摂取を控えるように心がけるだけでも、
違うかも知れませんよ。
【引用・参考文献】
・Gangwisch JE, et al. High glycemic index and glycemic load diets as risk factors for insomnia: analyses from the Women’s Health Initiative. Am J Clin Nutr. 2019 Dec 11.
・Anika Knüppel,et al.Sugar intake from sweet food and beverages, common mental disorder and depression: prospective findings from the Whitehall II study.Scientific reports. 2017 07 27;7(1);6287