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双極性障害の標準的治療とは?(推奨度:★★★★★)

薬物療法

・認容性が保たれるならば、炭酸リチウムやバルプロ酸などの気分安定薬を単剤から開始する。躁状態、うつ状態がコントロールできなければ、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールなどの抗精神病薬の併用を検討する。
・妊娠可能女性であれば、ラモトリギンや抗精神病薬を第一選択とする。単剤でコントロールできない場合は、妊娠、出産に関するデメリットを説明した上で、他の気分安定薬を併用する。
・1年に4回以上の気分エピソードがある場合は、バルプロ酸を第一選択とする。
・リチウムの副作用としては振え、甲状腺機能低下、嘔吐・下痢、腎機能障害などが、バルプロ酸の副作用としては肝機能障害、膵炎、血小板減少、高アンモニア血症などが、ラモトリギンは皮膚障害、複視、頭痛、白血球減少などが挙げられる。

生理学的治療

・治療抵抗性のうつ状態、速やかな治療効果を必要とする場合には、電気痙攣療法(ECT)を考慮する。
・数々の研究で、双極性障害のうつ状態に対しては有効性が示唆されているが、現時点では保険適応外である。

心理教育

・規則正しい生活を心がけ、自分で不調の兆候に気がつけるように、生活リズム表をつけることを検討する。
・うつ状態の時は判断力が鈍るため、重要な決断を避けるようにする。
・うつ病学会による患者用のパンフレットが役立つ。

認知行動療法

・うつ状態のコントロールに、認知行動療法の有用性が指摘されている。

自宅でできる効果的な対処法

・高照度光療法や経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)、インターネット支援型認知行動療法は精神科受診せずに可能であり、うつ状態に限り有効とのエビデンスがある。詳細はこちら。

その他

・双極性障害のうつ状態では、うつ病における自己対処法が有効である(こころの処方箋参照)。また、双極性障害の二次的な症状として不安、睡眠の異常をしばしば併発するが、その場合は、不安障害や睡眠障害に順じた標準治療を対症療法的に行う。その場合、こころの処方箋のような自己対処法も有効性が期待できる(不安障害睡眠障害のこころの処方箋参照)。

【引用・参考文献】
・樋口輝彦(編) 今日の精神疾患治療指針第二版 医学書院  2016
・加藤忠史ら 日本うつ病学会治療ガイドライン「双極性障害」 日本うつ病学会 2017

更新:2020.4.9

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