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暑いと双極性障害の症状が悪化する?(推奨度:★★☆☆☆)

 

薬のソムリエ
いやぁ〜最近はようやく涼しくなりましたけど、8月は暑かったですね…。
ウエタさん、今年の夏はどうでした?

 

ウエタ主任
え?コロナ騒ぎで、フェス行けなかったから、昼はBBQ、夜はクラブかバーで飲み明かしたよね。

 

薬のソムリエ
・・・・・。
・・・・・・・・・。
ウエタ主任
なになに?
ちょっとダンマリきめ込んでどうしちゃったの?おったまげなんだけど?

 

薬のソムリエ
やめなさいやめなさい!
おじさんのくせに若者言葉なんて。
主任、今日…絶対おかしいでしょ。

 

ウエタ主任
な〜に言ってんの!
クスリならやってねえよ?!

 

薬のソムリエ
正直、クスリやってるくらいおかしいです。警察を呼びます。
ウエタ主任
おいおい・・・夏だぜ?
2020年の夏?
一回きりの夏?
アツ過ぎるこの夏?
多少ネジ外れるくらいがちょうどいいっしょ!!

 

薬のソムリエ
・・・・ははあ。もしかしたら、「熱気にやられた」のは、
病気が原因かもしれないですね。
ウエタ主任のために、「熱気で双極性障害が悪化する」という内容の
論文をご紹介しますよ。

 


双極性障害は一般的に躁症状とうつ症状を繰り返し発症する疾患である。これらの症状の発症には、季節性の要因が関与していることも少なくない。著者らは、気温と双極性障害との関係を明らかにするため、台湾における精神科入院患者を対象とした調査研究を行った。

双極性障害患者の入院増加と、平均日中気温の関連を調べた。まず台湾の中央気象局(CWB)から得られた気象データより、352地域の平均日中気温を算出し、1996年から2007年のPIMC(Psychiatric Inpatient Medical Claim)データより、国民医療保険制度に加入する精神科入院患者を選別して解析を行った。

その結果、双極性障害患者における入院の相対リスクの増加は、とくに成人と女性において24.0℃以上(50th‰)の温度で相関が認められ、特に最高日中気温30.7℃以上(99th ‰)で高まった。

著者らは、双極性障害における各症状エピソードの再発を予防するにあたって、極度の暑さと双極性障害の入院増加との関係を理解することが重要であると考えられる。


ウエタ主任
いやはや、まったく。
こんな暑い日が続くと調子が狂いますな。

 

薬のソムリエ
あっ!ウエタ主任。正気を取り戻したんですか?
ウエタ主任
最近、暑い日だと特にそうなってしまうのですよ。
自分でもおかしいと思っていましたが、
まさか自分が躁うつ病の疑いがあるとは・・・。

 

薬のソムリエ
いやぁよかったですね。どうなることかと思いましたよ。
ウエタ主任
こんな論文を見せられて、的確なツッコミをするために、
躁うつの神様が私に慈悲をくれたのですな。
それでは早速、よろしいですかな?

 

薬のソムリエ
変わり身早い事に怯えている最中でもよければ、どうぞ。
ウエタ主任
私も躁うつ病、もとい双極性感情障害には詳しい方でしてね。
日照時間が少ない地域で生まれると、双極性障害の発症率が高まるんだとか。
つまり日照時間が少ないと、双極性障害が悪化する。ここまではよろしいですな?

 

薬のソムリエ
確かにそうです。
ウエタ主任
だとすると、おかしいですな。
暑いということは、日照時間が多いと考えるのが妥当のはず。
すなわち、暑ければ暑いほど、入院が増えるというのは明らかなムジュン!!
このムジュン・・・どうしてくれましょうかッ!!

 

薬のソムリエ
ウエタ主任。なかなか鋭い指摘ですね。
でも、ちょっと見て下さい。この論文では、あくまで
「入院リスクとの関連を調べた」であって、
「抑うつ状態との関連を調べた」ではないんですよ。

 

ウエタ主任
む・・・つまり?どういうことですかな?

 

薬のソムリエ
日照時間の少なさと関連しているのは、双極性障害のうつ状態です。
日照時間が多いと、むしろ軽躁状態になりやすくなるのですよ。
そして双極性障害患者の入院は、なにもうつだけでなくて、
躁状態、つまりテンションが上がりすぎて入院する場合もあるってこと!

 

ウエタ主任
・・・ぐぬ。
つまり、この研究での入院というのは、
相当数の躁状態での入院患者が含まれていると・・・?

 

薬のソムリエ
明記されてはいませんけどね。その可能性は多分にあるでしょう。
ウエタ主任
・・・ちょ、マジかよ!!
今回はしてやられたわ!
チョベリバ!!
か・ら・の~・・・まいっちんぐまち子!

 

薬のソムリエ
ショックでまた躁転したようですね。
しかも今回は昭和の若者になってしまったようです。
さて・・・あとは、警察に任せましょうか。

【引用・参考文献】
・Sung TI, et al. A positive relationship between ambient temperature and bipolar disorder identified using a national cohort of psychiatric inpatients. Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. 2012 Jul 5.

更新:2020.9.3