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花を数秒見るだけで、ストレスが軽減される?(推奨度:★☆☆☆☆)

 

薬のソムリエ
バラ・・・は、愛。
百合・・・は、無垢。
そしてアジサイは、冷淡・・・・。

 

ウエタ主任
ソムリエさん。さっきから何ひとり言を言っているのですかな。
通報されたいのですか?

 

 

薬のソムリエ
わぁお!居たのですか!?
通報までしなくても…。
ウエタ主任

オジさんの独り言は危険ですから。

…それに今日。新しい論文を紹介するから来るように言ったのは、ソムリエさん自身でしょう?

 

 

薬のソムリエ
来ているなら来てるって言ってくれてもいいのに…。
どうも皆さん、お大事にされていますか?申し遅れましたが、薬のソムリエです。
今日は、花を数秒見るだけでもストレスが減る、という旨の論文をご紹介しますよ。

 

ウエタ主任
なるほど。さっきから花言葉を連呼していたのは、それと関係あるのですか?

 

薬のソムリエ
いやいや。「花に詳しい人はステキ」って、
元カノが言っていたんですよ。
だから花言葉とか、知っている方がいいかなって。
モテたいので。

 

ウエタ主任
そこまでハッキリ言われると、逆に清々しい感じがしますな。
(まぁ、そっとしておきますかね・・・)

プレゼントやお見舞いに花を届けるという習慣が社会に定着している事も見ても、花に癒し効果があるらしい事が分かるが、花の鑑賞によってストレス反応が本当に軽減されるのかどうかは十分に検証されていなかった。本研究は、その実証を試みたものである。

まず、大学生に花を想起させ、そのイメージに近い花の画像を用意した。
次に、花の画像を見せる前後で、血圧変動、情動変化量、ストレスホルモン、脳画像などそれぞれのストレス指標がどのように変化するか調べた。

平均年齢24.4歳の被験者35人に、ディスプレイに不快な画像(事故場面、ヘビや虫など)を6秒間表示した後、花、青空(心地良い画像)、椅子(不快でも心地良くもない画像)の3種類の中から一つを6秒間表示し、その後26秒間は何も表示せず、この間の血圧と情動スコアの変化を調べた。情動スコアは最もネガティブな感情を「-3点」、最もポジティブな感情を「+3点」として評価を依頼した。

その結果、不快な画像が表示されている6秒間に血圧が上昇、画像が切り替わると低下し、花の画像が表示された時の低下幅は最大3.4%に達した。花の画像が表示された時の平均血圧は、青空や椅子の時に比べ約2mmHg有意に低く、有意差のある状態が8秒間続いた。情動スコアについては、不快な画像から花または青空に切り替わった時に有意に上昇し、マイナスからプラスに転じたが、椅子が表示された場合はマイナスのままだった。

次に、32人(平均年齢21.6歳)に、不快な画像を4分間表示した後、花、または花のモザイク(使われている色は花と同じ緑や白など)を8分間表示し、ストレスホルモンである唾液中のコルチゾール濃度を測定した。その結果、花を表示した時にコルチゾール濃度が約21%有意に低下した。一方、花のモザイクを表示した時には有意な変化は見られなかった。

続いて、対象者は17人(平均年齢25.5歳)に、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて脳活動を評価した。不快な画像を表示した後に、花、花のモザイク、固視点(十字の印)を表示し、脳活動の変化を比較したところ、花を表示した時のみ、脳の右半球の扁桃体から海馬にかけて活動が有意に低下することが判明した(P<0.05)。海馬は記憶に、扁桃体は不快な情動に、それぞれ重要な役割を果たす領域であることから、花の画像を見たことでこれら二つの領域の活動が低下して、不快な画像の記憶やネガティブな情動が抑制されたと考えられた。

これらの結果から研究グループでは、「花の画像がストレス軽減に有効なことが明らかになった」と結論づけており、そのメカニズムとして、花の画像を見ることにより、ストレスから意識をそらす「ディストラクション効果(気そらし効果)」と呼ばれる作用が働いた可能性があるとしている。

なお、今回の研究には花の画像を用いたが、本物の「生花」は画像よりもストレス反応の低減により効果的であることが推察される。ただし生花の観賞が、血圧や心血管疾患、うつ症状などの改善に、どの程度寄与するのかは不明だ。研究グループは、「今後それらを明らかにするのが課題である」としている。


ウエタ主任
なるほど。不快な画像を見たときよりは、
花を見ていたほうが気分が柔らぐ、ということですな。
しかし、何故わざわざ花なんでしょう?

 

 

薬のソムリエ
そう言われると、そうですね。別に他の観葉植物でもいいのに。
ウエタ主任

例えばですよ?
椅子ではストレス緩和効果がなかったとのことですが、
椅子に異常に愛情がある方ならば、
ストレスが緩和する事もありえる、という理解で良いですかな?

 

 

薬のソムリエ

そんな変態は被験者から除外して欲しいですね。

まあ、その視点も一理あるか・・・。
逆説的に、異常な花嫌いの人なら、ストレスは蓄積するかもしれないし。

 

ウエタ主任
なるほど。
つまりは好きなものは人それぞれ。
であるならば、一概に花がいい、と結論づけるのは暴論な気もしますなあ。

 

 

薬のソムリエ

確かに。今回の研究は、花を美しいもの、癒されるものと判断している人が統計的に多いからこその結果の可能性が高いのかなあと思いますね。

まあいいんじゃないですか。花が好きな人が多いってことが分かっただけで。

 

ウエタ主任
うーむ、ストレスの指標についても釈然としないんですがね。
平均血圧が2mm低かった、とか、効果が8秒続いた、とか書いてありますが。
それって凄いの?という考えから逃れられないのですよ。

 

 

薬のソムリエ
見るだけで血圧が落ちるんだからかなり有効だと思いますけど。
ウエタ主任

 

 

薬のソムリエ
・・・なんですか?コレは
ウエタ主任
カーネーションです。花言葉は、「失望」。
たかが2mmごとき、8秒という変化で満足しているとは。
精神医療に鋭いメスを入れる若き風雲児、
「改革のソムリエ」どのが聞いて呆れますな!

 

 

薬のソムリエ
あの、「薬のソムリエ」です。
勝手に改名しないように。

 

【引用・参考文献】
・HirokoMochizuki Kawai,et al. Viewing a flower image provides automatic recovery effects after psychological stress. Journal of Environmental Psychology Volume 70, August 2020, 101445

更新:2020.8.06