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高照度光療法

高照度光療法とは

高照度光療法は、季節性うつ病(秋冬になるとうつ状態になりやすい病気)や概日リズム障害(体内時計に異常がある病気)の第一選択として確立されている治療法です。季節性うつ病では、光療法単独で44%も奏功したというデータがあります。近年では、それに加えて非季節性のうつ病、つまりシンプルなうつ病にも効果的であるとする報告が蓄積しており期待されている治療法の1つです。まだ研究段階ではありますが、神経性過食症や不安障害に対する有効性を指摘する報告もちらほら出てきています。 光療法はどのような機序で効果を発揮するのでしょうか。その鍵は、眠気を誘うホルモンであるメラトニンが握っています。網膜に届いた光の刺激は、脳の視床下部にある視交叉上核に伝わります。その後、光の信号は松果体に送られてメラトニンの分泌を制御します。制御されたメラトニンは夜間(光暴露後約15時間後)になると再び分泌されて眠気をもよおすように働きます。

高照度光療法の有効性

非季節性のうつ病と診断された被検者に対し、光療法(Light Therapy:LD)と抗うつ薬(Antidepression Drug:AD)、およびそれらの組み合わせた群をランダム化試験で直接比較した結果、抗うつ薬(AD)と光療法(LT)の効果はほぼ同等(SMD=0.19、P=0.17)でした。また、LTとADを組み合わせた群は、AD単独群よりも優位に、うつ状態を✳︎中程度改善させました(SMD=0.56、P<0.001)。従って、抗うつ薬と光治療の併用は、非季節性うつ病にとっても推奨される事が示唆されました。
✳︎SMD:標準化平均差値。慣例的に≧0.2を小さな
差、≧0.5を中程度の差、≧0.8を大きな差とする。

高照度光療法の安全性

目への安全性を調査したレビューでは、健康人では安全であるとされています。10000ルクスの照度で5年間、のべ1250時間照射を行った研究でも、重大な副作用がなかった、とする報告もあります。ただし、光線過敏の被験者では黄斑変性(網膜の中心部が変化する病気)が生じた例が報告されており、光線過敏や眼疾患がある場合は主治医に相談の上での実施が望ましいとされています。また、双極性障害の躁状態にある場合は、躁状態を悪化させる可能性もあり、念のため避ける場合があります。

高照度光療法の具体的な方法

十数秒から数十秒/分、太陽光などの光源(2500ルクス以上の明るさ)をみつめ、それを1から2時間程度続ける事が必要です。それを毎日続けることで効果が期待できます。睡眠リズムの是正効果に関しては数日、抗うつ効果に関しては1から2週間前後で効果が出てくるとされています。メラトニンの分泌は光を浴びてからおよそ15時間後にくるとされているので、たとえば夜11時に寝たい場合は朝8時頃に光を浴びるとよいでしょう。

運用が難しい方には、光治療器がお勧め

ただ、朝の多忙な時間に、1時間も光を浴びる事は現実的かといえば、なかなか困難かもしれません。それに、生活スタイルによっては日が昇る前から活動せざるを得なかったりする事もあり得ます。悪天候では太陽の光を浴びる事自体が困難ですし、気温が高すぎても低すぎても光を浴び続ける事がかなり苦痛になってしまいます。そんな方は、光治療器がお勧めです。病院では医療用のものを用いますが、最近は楽天でも低コストで簡易版のモデルが市販されているようです。照度は20000ルクスと医療用に十分匹敵するものなので、気軽に試したい方は、そちらもご検討下さい。お勧めは、こちらに紹介した目覚まし機能付きの製品ですね。起床後しばらくならば、光を浴びるのも苦痛にはならなそうです。私個人も、診療で患者さんにもお勧めしています。

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【引用・参考文献】
・光療法推進委員会 日本を元気にする光療法の総合サイト
https://portal.lighttherapy.jp/
Geoffroy Pierre A,et al. Efficacy of light therapy versus antidepressant drugs, and of the combination versus monotherapy, in major depressive episodes: A systematic review and meta-analysis.Sleep medicine reviews 2019Dec01 Vol. 48

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