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コンピューター支援型認知行動療法(CCBT)

コンピューター支援型認知行動療法(CCBT)とは

コンピューター支援型認知行動療法(CCBT:Computerized CBT)は、セラピストとの対面を必要とせず、自宅のPCで認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioural Therapy)のプログラムを受けられるよう開発された治療法です。原型となるCBTそのものは、うつ病をはじめ、不安障害、強迫性障害、身体表現性障害や睡眠障害など様々な精神疾患への有効性が確立されており、臨床場面で活用されている精神療法です。だたし、CBTができるセラピストの数は限られており、またそのコストも安くはないため、治療を受けられる患者さんに限りがあるのも事実です。CCBTは、CBTの技法をより手軽に会得し、高い費用対効果が期待できる治療法として注目されています。

コンピューター支援型認知行動療法(CCBT)の有効性

うつ病患者に対してコンピューター支援型認知行動療法(CCBT)による介入を行った研究40件をメタ解析したところ、CCBT介入群はプラセボよりうつ状態を改善させました(g=0.502で中等度の差あり)。また、CCBTは不安障害や不眠症状の改善にも有効性が報告されており、代表的な睡眠導入薬であるベンゾジアゼピン系薬剤の減薬にも一部有効な可能性があるという報告があります。
*Hedges’s gは標準平均差値を表し、一般的にはg≧0.2を小さな差、≧0.5を中程度の差、0.8≧を大きな差としている。

コンピューターによる認知行動療法(CCBT)の課題

認知行動療法には副作用がなく安全です。ただし、認知と行動にアプローチして不快な感情に対応しようとする性格上、受ける方の考え方によっては合わない事もあります。また、薬物療法と比較しても治療効果が出るまで2から4ヶ月ほどかかると言われています。CBBTは対面式のCBTと比べて気軽に始められますが、脱落率も高く、また有効性に関しても、質問に対するアドバイスなどのサポートが全くないと、効果は対面式のCBTと比較して劣る事がわかっています。

コンピューターによる認知行動療法(CCBT)が体験できるお勧めのWebサイト

無料可

【U2Plus】
うつ状態の患者さんのためのSNSで、コラム法やいいね日記などの技法をわかりやすく取り入れつつ、「励まし合う」というSNS独自の機能を導入しています。その効果はTOPでは約80%に効果!とかなりの強気です…患者さんにも勧めていたところなかなか好評で、特に10歳代から20歳代に受け入れられやすい印象です。それになんといっても無料。これって効くんだろうか?という疑問がある方でも、始めやすいのではないでしょうか。

【「ここれん」心の練習5分間】
千葉大学が監修した、認知行動療法(CBT)を気軽に体験できるツールです。CBTの主要なスキルであるソクラテス式質問法を使ったワークシートに取り組むことで、短時間で効果を実感する事ができます。U2Plusと同様無料であり、さらに短時間で取り組む事ができるため、面倒な方はまずこれから初めてみて、CBTに触れていただく事もよいでしょう。

【緊張緩和の癒し・リラックス法】
恐怖症や不安症、パニック障害などの、不安障害群の患者さんに向けたスマートフォンで実践可能なアプリです。緊張を緩和する思考のトレーニングや対症行動を、分かりやすい表現で説明しています(評価も高い!)。このアプリを使って、少しずつ実際の緊張場面で試しながら不安緊張・恐怖を減らしていけると、より効果的です。

【Meditopia~マインドフルネス・アプリ~】
アップルストアでのマインドフルネス・アプリの中で人気のアプリ。音楽や画像を使った分かりやすいガイドがあり、クオリティが高いと評判です。うつ、不眠、不安やストレスに対して効果が期待されます。7日の間無料で使えるので、試してみるのもよいかと思います。

【慶応義塾大学ストレス研究センター・マインドフルネス瞑想】
うつ・不安・不眠に有効なマインドフルネス・スキルのやり方を、実際に動画で解説しています。マインドフルネスは、「今、ここに」集中することで、不快な気分を和らげるスキルとして確立された瞑想法の1つです。通常有料の講習をうけて勉強するのが、なんと無料。これはチェックするしかないですね。

有料

【こころのスキル・アップトレーニング】
大野裕先生が監修している、WebでCBTを取り上げているものとしては大御所のサイトです。内容は充実しており、最終的には中核信念(スキーマ)を捉えて変容するところまで目指すという、意欲的なものとなっています。認知行動療法の考え方に慣れた人なら、このサイトはかなり役に立つのではないかと思います。CBTを深く知りたい方にお勧め。ちなみに…有料といっても、月額200円代なので、コーヒーを月に1杯我慢すれば良いだけです。

【心理ケアのヒカリラボ】
オンラインカウンセリングと、スマホで出来るCBTの学習ゲーム「SPARX」を取り扱っているサイトです。オンラインカウンセリングでは、様々なバックグラウンドをもつセラピストが、子どもの勉強の仕方から子育て中の母の悩みまで多様な相談にのってくれるようです。また、学習ゲーム「SPARX」ですが、これは普通のロールプレイングゲームのような画面で驚きました。10代の人にお勧めしたい…。僕も時間がある時にはやってみようかと思います。おじさんですけど。

【Kokoronet Personal】
福井至先生監修のWebサイトです。サイトの趣旨は、既出の「こころのスキルアップトレーニング」と似ています。TOPに有料版の申し込みは2500円と記載があり、少々お高め…ではありますが、その内容は対話形式で読みやすく、「学ぶぞ!」という気負いがなくともなんとなく読み進める事ができます。うつ状態だと有り難い仕様…。また、看護師、SE、管理職などに特有のよくある困った状況をシュミレートしてくれるので、すんなり頭に入っていきやすく、実践しやすい点も◎ですね。

【i CBT】
精神疾患の予防に特化した、認知行動療法を使ったオンライン学習です。パソコン以外にもスマートフォンでもできる気軽な認知行動療法でありながら、課題を心理士が添削してくれるなどオーダーメイドなサポートを受けることができます。ストレス対処能力の向上やストレスチェックの高ストレス者のケアにお勧めです。紹介した中では、最も実臨床のCBTに近い印象です。

【引用・参考文献】
・宗 未来 成人うつに対するコンピュータ認知行動療法(CCBT)の臨床効果、及び費用対効果についての系統的レビュー RIETI Discussion Paper Series 14-J-003 
・Takaesu Y, et al. Psychosocial intervention for discontinuing benzodiazepine hypnotics in patients with chronic insomnia: A systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2019;48:101214.
・Newby Jill M,et al. Transdiagnostic computerised cognitive behavioural therapy for depression and anxiety: A systematic review and meta-analysis.Journal of affective disorders 2016 Jul15 Vol. 199

・Wright Barry,et al. Computerised cognitive-behavioural therapy for depression in adolescents: 12-month outcomes of a UK randomised controlled trial pilot study. BJPsych 2019Dec12 Vol. 6 issue(1)
Wright Jesse H,et al.Computer-Assisted Cognitive-Behavior Therapy for Depression: A Systematic Review and Meta-Analysis.The Journal of clinical psychiatry 2019 0319 Vol. 80 issue(2)

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