みなさんお大事にされていますか?
薬のソムリエです。
今回は、抗精神病薬を服用中の方に、是非知って欲しいことをまとめました。
「こうせいしんびょうやく」って名前からしてイカツイから、
服薬するのもビビッちゃいますよね。
安心してください。
私は全種類飲んだことありますが、生きています!
・・・・最低限の安全性は、保障します・・・・。
抗精神病薬とは?適応は統合失調症だけじゃない!
まず、そもそも抗精神病薬って何?って話ですよね。
抗精神病薬は、統合失調症の患者さんのための薬です。
そもそも統合失調症とは、どんな病気なのか。
これを先に言っておかなければなりません。
統合失調症の患者さんは、
聞こえない音が聞こえたり(幻覚)、
あり得ないことを確信したり(妄想)、
言動がまとまらずわけのわからない行動をとる(連合弛緩)
症状がでます。
分かりやすく言うと、素人感覚にも、
「コレはかなりキている!病的だ!」
とわかる状態になります。
これらの症状が、
「脳内のドーパミン過剰による症状である」
という仮説のもとに使われるのが、
ドーパミンの作用をブロックする作用をもつ、
抗精神病薬という訳です。
(具体的には、D2受容体阻害作用をもつ、と言います)。
えっ?私、統合失調症じゃないのに!って感じたあなた。
大丈夫です。
抗精神病薬の適応範囲は統合失調症はもちろん、
うつ病をはじめとした気分障害、
不安障害、認知症などにも広く及んでいるのですから。
病名がハッキリしなくても、
幻覚妄想、興奮、不安、不眠、うつなどに、
対症療法として幅広く処方されています。
抗精神病薬が処方されることは割と一般的なことなんだとご理解下さい。
抗精神病薬の違いは?どのように使い分けるの?
それでは、抗精神病薬は、どのように使い分けるのか。
作用機序による分類、発売時期による分類など、
様々な分類がありますが。
ここでは使い分けを重視した分類を紹介しようと思います。
それは、
眠くなりやすい「鎮静系」と、
眠気が少ない「非鎮静系」です。
鎮静系抗精神病薬 | リスペリドン(リスパダール)、オランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル) ブレピクスプラゾール(レキサルティ)、アセナピン(シクレスト)、ペロスピロン(ルーラン) ルラシドン(ラツーダ)、クロルプロマジン(コントミン)、ハロペリドール(セレネース) |
非鎮静系抗精神病薬 | パリペリドン(インヴェガ)、ブロナンセリン(ロナセン)、アリピプラゾール(エビリファイ) |
処方されているお薬、見つかりましたか?
実は、その使い分けは単純。
幻覚妄想、躁状態、興奮や衝動性、不安、不眠など、過覚醒状態であれば「鎮静系」を、
うつ状態や、眠気、ふらつきのため鎮静系薬剤に耐えられない時は「非鎮静系」を
好んで選択します。
もちろん、薬によって起きやすい副作用や、
特定の疾患に対しての切れ味が違うので、
その辺も加味して処方しますけどね。
これを知っておくと、大体処方薬の意図が分かると思います。
抗精神病薬はどのような使い方をする?
先述のとおり、抗精神病薬は使用目的によって、用量・用法が若干違います。
大きく分けると、
精神病圏(統合失調症含む)か、それ以外か。
というローランド的発想でよいと思います。
まず、抗精神病薬の処方がメインとなる、精神病圏からご説明します。
お薬は可能な限り1種類を選択し、小量から開始します。
少なくとも数日間の観察期間をおいて、増量を検討し、
症状の寛解を目指します。
このとき、統合失調症であれば、初発例や軽症ほど、
少ない量で済む傾向があります。
その一方で、発症年齢が若いほど、また、未治療期間が長いほど、あるいは病前の社会適応が不良なほど、
治療の反応が悪いとされていますが、反応の仕方は患者さんによって異なるため、
結局のところ、少量から開始して増量、というのがスタンダードになります。
不快な副作用がない限りは、薬効が最大化される2-4週間程度は薬を続け、
無効と判断されれば薬を変更していきます。
アリピプラゾール(エビリファイ)でいうと、
6mgから24mg程度の範囲で維持されることが多いです。
ちなみに、統合失調症に対するアリピプラゾールの治験において、
6週間後の治療反応率は約70%だったという報告があります。
なお、他の薬剤も反応率に大差ない印象ですが、
難知性の統合失調症に対する薬であるクロザピン(クロザリル)は別格です・・・。
一方、精神病圏以外(気分障害、不安症、認知症など)では、どうか。
治療の反応をみるのは、最低数日、場合によっては2週間程度をみておくのは、
精神病圏の幻覚妄想の抑制を期待する時とそれほど変わりません。
しかし、使用する量は1mg~6mg程度が多く、量が少ないことが特徴です。
抗精神病薬のデメリットは?副作用はどうなの?
抗精神病薬の全てが、ドーパミン受容体をブロックする作用を持ちます。
そのため、ドパミン受容体遮断に伴う副作用のリスクは避けられません。
具体的には、動きが硬くなったり(パーキンソニズム)、
いてもたってもいられないような落ち着かなさを自覚したり(アカシジア)、
体が勝手に動く(ジスキネジア、ジストニア)などがあります。
ちなみに、これらをあわせて、「錐体外路症状」と呼びます。
他にも生理不順や、本来であればあり得ないときに乳汁が出る副作用(高プロラクチン血症)もあります。
また、発熱と筋肉のこわばりと自律神経症状(発汗・血圧上昇・頻脈など)などが特徴的な、
悪性症候群は放置すると命の危険もあります。
また、一部の抗精神病薬は食欲を変化させたり、代謝異常を起こしたりすることで、
体重増加のリスクがありますし、低血圧、口渇、便秘、頻脈、眠気、眼圧上昇を惹起する事もあります。
そのほかにも、血球減少、肝機能障害、発疹、痙攣、不整脈の出現に
加担する可能性があります。
図でお伝えするなら、こちら↓
皆さんが服薬している薬が、
どのような副作用が出やすいか、ご理解いただけましたでしょうか?
抗精神病薬、知っておいて損の無い知識
・統合失調症患者への内服では、例え症状が安定していても、抗精神病薬を内服していないと1年以内に70−80%程度が、2年以内に98%が再発する。
・抗精神病薬を維持していても統合失調症の16−23%は1年以内に再発する。
・初発例では少なくとも1年の服薬を維持する。再発例では少なくとも5年、可能なら生涯の投与が推奨される。
終わりに
いかがでしたか?
抗精神病薬は統合失調症にとどまらず使用され、
今となっては抗精神病薬という名前自体も、
必ずしも臨床にそぐわないものになってきている事を
ご理解いただけましたら幸いです。
なぜその薬が処方されているのか理解していないと、不安ですよね。
治療の意味を理解しておくと、
より、治療に積極的に参加できるようになるでしょう。
今日もマジメな話ばかりで、疲れましたね!
それでは、またお会い日する日まで、お大事に。
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【引用・参考文献】
・元住吉こころみクリニック「ラツーダの効果と副作用」https://cocoromi-cl.jp/knowledge/psychiatry-medicine/lurasidone/about-lurasidone/
更新:2020.6.8
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