児童精神科は、子どもの精神疾患を診るスペシャリスト
皆さん、お大事にされていますか?
どうも、お世話になっております。薬のソムリエです。
今日は、児童精神科という科の話をしましょう。
この記事をご覧いただいている方の中には
ご自身のことよりも、お子さんの事で困っている方もいるかもしれませんね。
実はお子さんの事でお悩みの方も、少なくないんです。
例えば子どものうつは、子ども全体では5-8%と以外に多いです。
さらに、うつ状態発症後1年以内に12%、4年以内に33%が再発を経験するという事から考えると、ご両親を悩ませるお子さんは多いのでしょうね。
子どもといえば、ちょうど反抗期と重なることも良くあるため、
病気でなく、甘えなんじゃないか?と考えてしまいがちになります。
児童精神科は、そのような病気なのか甘えなのかわからない、
子どもたちの複雑な精神状態を診るプロ集団なのです。
児童精神科医の専門性
児童精神科医は、関係性のプロである
児童精神科医は、関係づくりを重んじます。
それは、大人の精神疾患患者さんを診る時以上に、
信頼関係(ラポール)の形成が診療において重要である事を、知っているからです。
問診での病歴聴取が診断の8割を占める精神医療において、
ただでさえ言語能力が未成熟な子どもたちが、
心を閉ざしてしまうともう何も教えてくれなくなる。
それを避けるため、
児童精神科医は出来るだけ柔らかい表情をトレーニングします。
私も研修医の頃に児童精神科で研修しましたが、
診察場面をビデオで撮られ、後で指導医の先生から、みっちりと
「わかりやすい表現で!もっと話すのを遅めに!質問の長さも短めに!」
と、毎日に指導されたものです。
児童精神科医は、一般精神科医よりも導入に時間を割きます。
「今日は電車で来たの?バスで来たの?」
「今日は親が言うから仕方がなく来てくれたのかー。ありがとう」
子どもの不安を取り除くためです。
そうする事で、正しい診断、治療につなげる事が出来るのです。
また時として、
子どもの思いと両親の思いは相反する事があります。
両親の子どもに対する過剰な期待に子どもが辟易していたり、
子どもの衝動的な振る舞いに、両親が疲弊している事は、
児童精神科の外来では良く見られる光景でした。
児童精神科医たちは、両者の間をとりもち、共感的な態度で接し、
相互に影響し合う家族関係を修復させるサイコセラピー(家族療法)を行います。
また、薬物療法を主軸とできない子どもたちであればこそ、
本人を取り巻く環境にアプローチする事が重要であり、
治療は他分野の専門機関との連携が必要になります。
そのため、児童精神科医たちは、
教育機関や児童相談所、保健所や精神保健福祉センター、
子育て支援機関や、場合によっては警察などの司法機関との
連携を密にとっています。
研修中同席させてもらったのですが、
かなり普段他職種との連携をとっているせいなのか、コミュニケーション能力が高いDrが多いなあ・・・
と感激した事を覚えています。
生粋の精神科医の先生だけでなく、小児科医の先生たちもおられ、特に女医さんが多い事が、
さらに周囲とのコミュニケーション豊かになる原因かもしれませんね(とにかく、子どもの扱いが上手!!)。
そんな児童精神科医たちは、
関係性のプロフェッショナルと言えるでしょう。
児童精神科医は、子どもに使う薬のプロである
先程、薬を主軸にしにくいと書きましたが、
若年発症の統合失調症や気分障害、てんかん、場合によっては
注意欠如・多動症(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)などの疾患で、
止むを得ず薬が必要になる事もあります。
そうした時も、児童精神科医は強いです。
小児であれば、体重に配慮した容量調節が必要になる事もあるのですが
児童精神科医であれば、その調整に慣れています。
副作用に関しては本人だけでなく、その家族も敏感にならざるを得ないところ。
その説明にも慣れていて、ちゃんと安心させてくれるところも
児童精神科医の強みですね。
児童精神科医は、児童思春期に問題化する疾患のプロである
児童精神科医は、
知的障害、自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害などの発達障害とその関連疾患や、
吃音、チック、選択性緘黙や分離不安障害、反応性愛着障害、身体表現性障害、摂食障害、起立性調節障害や過敏性腸症候群、過換気症候群など、
児童思春期に顕在化しやすい疾患の患者さんを多く診ています。
数が多ければ、その分診療技術も向上するもの。疾患に関わる知識も豊富です。
私も児童精神科の研修でそれを実感してます(たった数ヶ月の研修経験だけでも、診療に自信がつきました)。
また、先生たち、医療スタッフたちの子供に対する深い愛情も、
さらにそうした印象を深めるのかなと感じましたね。
これは、初期研修時のエピソードなんですが、
入院していた摂食障害の女の子を私が担当していた頃の事。
その子の誕生日に、病棟のスタッフ総出で誕生会をしたのですが、
その後片付けをしている時、指導医が声をかけてきました。

それに、この誕生会のために多くの時間を使ったね。
他の科じゃこんな事やらないだろ?…こんな事をやっても、無駄だとは思わないかい?


その通り。無駄。この子の病気が良くなる訳ではないよ。
…今はね。
この子は病気だけど、健康な子と同じ。この瞬間も、成長しとるんだ。
年齢的にいったら、この入院生活がこの子にとっての青春だよ。
青春の記憶ってのは、輝かしくなくちゃならない。そうは思わないか。
この子はこの先の人生、青春時代を思い出すだろう。その時、少しだけでも「みんなが自分の為に何かしてくれた」という体験は、きっと今後の自己肯定感を育ててくれるだろう。
僕らはね、患者の未来を治療しとるんだよ。
児童思春期の症例は、特に短期間での症状改善が難しい病気を扱うことが多いので、
よくならない患者さんばかり診て、ちょうど疲れていた時でした。
そんな中という事もあって、その指導医の言葉にはハッとさせられたことを覚えていますね。
児童精神科の先生たちは、本当に子供が好きなんだなあ…。と肌で感じました。
そんな深い情愛に満ちた児童精神科医ですが、
日本にはそれほど多い訳ではありません…。
児童精神科医に相談したい方は、
日本児童青年精神医学会が認めた認定医の施設にお問い合わせいただくか、
病院検索・名医検索(ホスピタ)の「専門外来」から検索をかけていただくとよいでしょう。
児童・思春期の患者さんは、
脳の異常の他親子関係や学校の環境、反抗期など様々な要因により
症状が形成されるので、個人的には一般の精神科医よりも専門家のほうが
よく診られるのではないかと考えています。
今現在、悩んでおられる方は、
よい児童精神科医と出会えるといいですね。
それでは皆さん、お大事に。
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更新:2020.4.15
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